飾卓への気持ち






穏やかな小春日和のある日、大阪北浜オフィスビルが立ち並ぶ一角に、明治の商家の生活文化を懐に抱きながらも、
統一された伝統様式の美を今に残す重要文化財・旧小西家住宅を訪ねました。

外壁はすべて漆黒に塗られ道修町に面した門をくぐって玄関に足を踏み入れると、ほの暗い空間に、なんとも心地良
く人を包み込む暖かい空気が漂っており、訪れた人の心をやさしく癒してくれるのです。その大きな安らぎに似た感
覚に感動さえ覚えるのは、決して私一人ではないでしょう。日本の伝統文化における黒色の美は漆黒に極まると言わ
れ、すべて色は漆黒の中に溶け込み、そこで全ての色は尽きるという文章を私は思い出しました。濡鳥一色のほの暗
い台所の土間に立ち、この小西邸での西洋文化の香りのするテーブルセッティングを想像すると、心が躍るような気
分になり、頭の中にいろんなシーンが次々と浮かび始めたのです。私はこれまでテーブルコーディネートの仕事を通
じて多くの方々と出会い、また学んでもきましたが、ここ数年、自分自身の中で何か物足りなさを感じていました。
そんな時小西邸と出会ったことで、私の中の日本人としての心が呼び覚まされたのでしょうか。あらためて日本人の
心の原点に立ち返り、日本と西洋の伝統文化を融合させた新しい世界を自分に問うてみたくなりました。そして、双
方の生活文化に息づく心を大切にした、かつ洗練された凛とした美しさを保った、新しい伝統文化が生まれたらどん
なに素晴らしいだろうと・・・。日本伝統文化と西洋の食文化を融合させたそのための一つの礎、流れの一滴になり
たいと、独自のテーブルスタイル「飾卓」として提案ができればと考えました。

旧小西家住宅との出会いから、2001年「大阪商家漆黒の空間に遊ぶ飾卓の世界」をはじめ、その後毎年由緒ある
建物にて「飾卓」をシリーズとして企画をしています。飾卓の展示をご覧だいた皆様の心に、ほんの少しでも私のそ
んな思いをお伝えすることができれば幸甚です。





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